ついに見つけてしまったのか。 聖杯を! 資産倍増のシステムトレード戦略を検証します。
下のグラフは、マネックス証券のトレードステーションで、あるシステムトレード戦略の収益を表したものです。
キレイな右肩上がりのグラフです。
利益がドンドン増える姿をあわらしています。
このシステムトレード戦略を手に入れたからには、世界のセレブの仲間入りが確定?
本当でしょうか?
さっそく検証してみましょう!
システムトレード戦略の中身
このシステムトレード戦略の詳細はこちらです。
◇トレード戦略詳細
テクニカル指標「RSI」を使います。
RSIが 50より小さく直近の RSI の 7期間の中で 3足前以前に RSIの最安値を付けたとき買い。
RSIが 50より大きく直近の RSIの 7期間の中で 3足前以前に RSIの最高値を付けたとき売り。
ビルトインストップを置く。
ビルトインストップは下の3つ
SetStopLoss(StopAmt);
損切り注文を発注する SetStopLoss
損切りのパラメータは StopAmt
SetBreakeven(BEAmt);
同値降り注文を発注する SetBreakeven
同値降りのパラメータは BEAmt
SetDollarTrailing(TrlgAmt);
金額トレーリングストップ SetDollarTrailing
最大含み益から任意の金額分離れた価格にストップ注文を発注します。
最大含み益が増えれば、それだけ 逆指値価格も上がります(買いポジションの場合)。
トレーリングストップのパラメータは TrlgAmt
プログラムコードはこちら
Input: Length(14), StopAmt(50), BEAmt(50), TrlgAmt(100);
Var: xRSI(0);
xRSI = RSI( Close, Length );
If xRSI < 50 and LowestBar(xRSI, 7) >= 3 then Buy next bar at market;
If xRSI > 50 and HighestBar(xRSI, 7) >= 3 then SellShort next bar at market;
SetStopLoss(StopAmt);
SetBreakeven(BEAmt);
SetDollarTrailing(TrlgAmt);
プログラムの動作確認
おかしな動きをしていないか、チャートをよーく見てみましょう。
2018年3月29日 RSIが50%を下回って「買い」のシグナルが出ています。
ローソク足は陰線です。
シグナルの出方は、トレード戦略のロジックに合っていますが、始値で買った日のローソク足が陰線なのに、この日のトレードで利益が出たことになっています。
おかしいですね。
分足も表示させましょう。
チャート
始値で買ってすぐに、トレーリングストップで利益が確定されています。
プログラムの動きは良さそうですが、利益確定の幅が少なすぎますね。
これは大問題です。
大事なことを説明していませんでした。
このページの最初に、ご覧に入れたシステムトレード戦略の収支のグラフは、手数料が考慮されていません。
検証期間では、899回の収益機会がありました。
899回のトレードで
¥868,300 の利益
手数料が 100万あたり 400円 の場合、往復で800円とした場合
¥719,200 の手数料
¥149,100 ←手数料を差し引いた利益
手数料を考慮する
マネックス証券のトレードステーションで売買したときの手数料はプランによって異なります。
※2018年5月4日現在 出所:マネックス証券ホームページより
トヨタ自動車の2018年5月2日の終値は 7,165円 100株単位で取引する事を想定しましょう。
手数料プランは ノーマルプラン 約定金額100万円 ごと 400円 とします。
一回の取引で 400円。 利益確定の往復で 800円として計算します。
手数料を反映させる方法
チャート上で右クリック ー ストラテジーの設定
すべてのプロパティ をクリック
一般 タブから 手数料の欄に 400 と入力して OK ボタンを押します。
手数料を考慮した損益グラフはこちらです。
ワオ! いきなりひどいグラフになってしまいました。
あまりにトレーリングストップ(利益確定)の幅が狭すぎて、手数料をまかなえていません。
こんな時には、そう! 「最適化」 をしてみましょう。
ストップロスを最適化
マネックス証券のトレードステーションでは、パラメーターを自動で最適化してくれる機能があります。
チャート上で右クリック ー ストラテジーの設定
設定 をクリック
トレーリングストップのパラメータは TrlgAmt です。
トヨタ自動車株を 100株 売り買いするときの往復の手数料は 800円なので、最適化の数値は 開始800 にしました。
終了は10000、増分は100です。
※増分が100ならば、最適化の数値は 800ー900-1000・・・・10000となります。
最適化ボタンを押すと、最適化が始まります。
最適化が終了すると、最適化レポートを見ることが出来ます。
表示 ー ストラテジ最適化レポート
その他の 「ブレークイーブン」 と 「トレーリングストップ」 も最適化したくなりますよね。
同様に最適化してみましょう。
トレーリングストップのストラテジー最適化レポートを見てみましょう
ストラテジー最適化レポート
表題の 「すべての総損益」をクリックすると、総損益順にソートされます。
トレーリングストップは 800 の場合が一番成績が良いようです。
赤字で表示されているのが、最適化のテストをした際に利益が出ているものです。
一番成績が良いのが 800。
次が2200です。
800だと、手数料と同額なので、2200にしますか?
その前に2000前後の収支をよく見てみましょう。
2200では総損失がプラスですが、2000では逆にマイナスです。
これは危ういですねぇ。 たまたまプラスになった雰囲気がただよっています。
最適化をした後のグラフはこちらです。
うーん。 嬉しいような、嬉しくないようなグラフです。
気になるのが、X軸の 取引番号35付近から収益が回復しています。
何があったのでしょうか?
トヨタ自動車の株価のチャートと、収益のチャートを並べて比較してみましょう。
株価が一方方向にトレンドをもって動いているときは、収益が悪化するようです。
この投資戦略は株価がボックス圏にいるのか、ブレイクアウトして上昇(下降)しているのかを、判断するインジケーターを追加すると、パフォーマンスが向上しそうですね。
RSIインジケーターの特徴そのものを反映しているかも知れません。
ただし、チャート や ストラテジパフォーマンスレポート の 取引リストの詳細を見ていると、主なインジケーターRSIのシグナルが機能していると言うよりも、一日の値幅をトレーリングストップで拾って、収益を積み上げている部分が大きいように思えます。
まとめ
残念ながら、夢のシステムトレード戦略では無かったようです。
この投資戦略は、下のリンク先で紹介した Easy Languageホームスタディコース に掲載されているプログラムです。
ガッカリされた方もいらっしゃると思いますが、完全に右肩上がりな収益カーブを描く投資戦略は、存在しないと疑ってください。
これは、自作のシステムトレード戦略を作成した時にも言えることです。
私も、うっかり当日のチャートの終値をパラメーターに組み込んで、投資戦略プログラムやインジケーターを作ったことがあります。
バックテストでは、自分でも驚くようなパフォーマンスでしたが、もちろん誰も分からない当日の終値を使って、株の取引は出来ませんから、まさに絵に描いた餅です。
バックテストだけで使える、投資戦略でした。
今日は、このあたりで失礼します。
RSIによる株式投資戦略をプログラムする。トレードステーションとイージーランゲージ[EasyLanguage]を学び、株式投資で差をつける。27